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重耳 (下)

重 耳 ちょうじ (下)
著者:宮城谷昌光

 太子の申生を死に追いやり憂いをたったはずの驪姫ではあったが、公子なかでも宮廷内に隠然とした影響力を持つ重耳と夷吾が他国に亡命したことは驪姫の心をふさぐ結果になっていた。
 後の九月甲子に詭諸が死し、いよいよ驪姫の子である奚斎が即位するがまもなく側近の手によって暗殺され秦に亡命していた重耳の異母弟である夷吾が晋の玉座に座る。
しかし、夷吾の不明不徳の故か旱魃などの災害や宮廷内の人心が集まらず、何時しか晋国内で重耳待望論がおこっていた。

 その重耳は夷吾の放った刺客に狙われながらも放浪のたびは続いた。しかし夷吾の不明に呆れかえった臣下が結束して重耳の帰国の著をつける。そして病を得た夷吾と入れ替わるように晋に帰り着いた重耳は玉座の主となる。

 重耳は国力の回復が侭ならず掌握し切れていない晋軍を率いて楚に攻められた宗を救援するべく軍を発した。放浪の旅の中で楚王に厚遇された恩義に報いるため約束通り晋の全軍を三舎(三日行軍する距離)を後退させる。
 そして、その後城濮の地で楚軍を打ち破り(城濮の戦い)この戦いによって重耳の名実共に覇者として内外に決定付けることになり、斎の桓公と並び春秋五覇の一人として数えられる。



 話は戻りますが、重耳を教育する師である郭偃(ト偃)はもともと占いの役人から、重耳・中巻で貴族に出世している人です。「国語」の中にその君主詭諸(献公)と郭偃のやり取りのなかに興味深いところがあります。

 「献公ト偃に問いて曰く、虢を攻むるには何れの月ぞと。対へて曰く、童謡にこれ有り、曰く、丙之晨、龍尾辰に伏す。均服振振として、虢の旂を取る。鶉の賁賁たる、天策焞焞たり。火中して軍を成し、虢公それ奔らんと。火中して旦たるは、それ九月十月の交かと。」

献公が占いの役人。郭偃(ト偃)に問いて
「虢の国を攻めるのはどの月がいいか」
「童謡に、陰暦十月丙子の早朝には、竜尾星(二十八宿の東方を蒼竜七宿。角亢氐房心尾箕の七宿。さそり座の尾のあたり)に太陽と月が宿っていて隠れて見えない。全軍同じ武装で威勢を振るって、虢の国の旗を奪ってその軍を破るだろう。鶉火星(南方の七宿を朱鳥といい、その中央の三宿柳・星・張の三つを特に鶉火という。さそり座のアンタレスの総称)は明るく盛んに、天策星は暗くて弱い。明け方に鶉火星は真南に輝くときに戦に勝って、虢公は逃亡するであろうと歌っております。鶉火星が真南に来て夜が明ける九月と十月の交わるときがその時でしょう」

 この頃はまだ、亀の甲羅や獣骨のト占、八卦のほかに童謡や民謡といったものが予言として記録されています。民間の声を政治に盛り込むといったところでしょうが庶民がこれほどの童謡を口すさんでいたのか正直なところ疑わしいです。しかし、諸葛孔明も「梁父吟」を歌っていたというので口の端に載せることで成就させるといったことなのかもしれませんね。



 また、有名な逸話として。重耳が放浪中に五鹿で畑を耕す野人に食べ物をねだり土の塊を与えられるというくだりがあります。
 重耳は怒りますが側近に
 「土は領土の象徴であるから、将来この土地を獲得するであろう。木星の運行を観察すると今は寿星(乙女・天秤)から鶉尾(うみへび・からす)にあるから十二年後・戊申に再びこの星座に来たときにこの土地を得るだろう。これは天が野人を借りて命じたものである」
 と諭されます。

 そして、紀元前六三六年十月、晋にて弟の恵公が卒し、秦軍を伴って重耳が入国するくだり。黄河で玉を奉じて祈りを捧げます。小説ではちょうど狐偃(咎犯)が自分に過失が多かったことを嘆き暗に論功行賞をねだったところを介子推が快く思わない場面です。
この後、秦から付き添ってきた董因に聞き星の位置から吉と説きます。省略された八卦を補足すると「秦之八(秦の卦を地天泰、この卦が変化しないことを八という。乾下坤上、完全な陰と陽が揃う最も良いとされる卦)」という卦を出します。この意味は天と地が交わって相通じ、小人は去り大人君子が来るという。もちろん大人君子は重耳で、小人は懐公(恵公の子の子圉)の事を指します。


 この当時の思想とは天の天帝の命令が天命であり、天帝の行う道が天道である。つまり天の命を知るには天体観測による星の導きによるものであって天道の話も天文の知識をベースにした占星術が基になっているわけです。
 何度も出てくる大火星・さそり座のアンタレスは、春の農耕を告げる星で農耕をつかさどった后稷の守護神でもあり。上巻の初めに触れられた晋の祖・唐叔が封ぜられたがこの星の歳であったことから晋においてはこの星が重要とされます。

 西洋ではコペルニクスなどの天文学が奇妙に宗教と結びつきましたが、古来の中国では天文学と占星術が天の教えであり導きでもあると言う考え方になります。
こういう具合に解き明かせば、なるほど後世の諸葛孔明、龐統、司馬懿たち知識人が天文から予言を導き出すのかが良くわかりますね。

小説・歴史・中国・ドラマ
重耳〈下〉 (講談社文庫)重耳〈下〉 (講談社文庫)
(1996/09)
宮城谷 昌光

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Comment

 

『重耳』私も以前に読みましたが
また、読みたくなりました。
この作品の外伝的な
『介子推』も面白いんですよね。
  • posted by がんじがらめマン 
  • URL 
  • 2009.01/02 13:21分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: タイトルなし 

コメントありがとうございます。『介子推』も一度読了しておりますので、改めて読み直して紹介する予定です。
介子は北方謙三のハードボイルド風の熱い漢なんですよね。
  • posted by 緋色悠依 
  • URL 
  • 2009.01/06 23:26分 
  • [Edit]
  • [Res]

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