あかでやみぬる月の光を

本との出会いを徒然なるままに綴る。

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山 桜

山 桜


 原作:藤沢周平。「山桜」短編時代小説(新潮社文庫:短編集「時雨みち」に収録)をもとにした2008年公開の日本映画。

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 江戸時代。東北の小藩・海坂藩の下士の娘・野江(田中麗奈)は、若くして前の夫に病気で先立たれ。磯村庄座衛門(千葉哲也)と二度目の結婚をしていた。望まれて磯村の家に入ったものの、夫の庄座衛門と舅の左次衛門(高橋長英)は武士でありながら蓄財に勤しみ、公に隠れて貸し金に励んでいた。姑の富代(永島暎子)からは出戻りの嫁と蔑まされていたが、二度の失敗は許されないと心に決めて、野江は嫁として懸命に耐える日々を過ごしていた。


 ある日、野江は叔母の命日の墓参りに一人で山間の寺に詣でていた。帰り道に薄紅色の一本の山桜の美しさに惹かれ一枝手折ろうとするものの花に手が届かずに困っているところへ、一人の武士が声をかけ横からするりと手を差し伸べて山桜の枝を手折ると野江に差し出した。
 男は、野江が磯村に嫁ぐ前に縁談を申し込んでいた剣術の名士として誉れ高い手塚弥一郎(東山紀之)であった。密かに思っていてくれていたとの話だったが、野江は剣術の名人は怖い人と思い込み断っていたのだった。しかし、会話をしてみると手塚は野江が思っていたような人とはまるで正反対の、折り目正しく心優しい人であることが分かる。

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 弥一郎が立ち去り際。
 ――今はお幸せでござろうな
 と言う言葉に、野江は「はい」と答えるのが精一杯であった。
 ――さようか。案じておったが、それは重畳。 
 と、弥一郎は野江を気遣う言葉を残しその場を去っていった。

 山桜が引き合わせた二人の偶然の出会いであったが、ずっと自分を気遣ってくれている人がいただけで野江の胸にぬくもりが広がるのであった。
 しかし、野江が磯村の家に帰ると、舅の左次衛門が相変わらず厳しい貸し金の取立てに忙しく。姑の富代からも出戻りの嫁と辛く当たられる旧態と変らぬ日々が続くのであった。

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 そんなある日、弥一郎は農政を我が物とし私腹を肥やす諏訪平右衛門(村井国夫)に対して登城途中で刀を抜き、諏訪の従者六人を軽く当身で一蹴すると難なく平右衛門を斬り捨て、そのまま弥一郎は友人二人に付き添われて大目付に出頭してしまった。
 毎年の長雨で飢饉が続き困窮する農民を虐げ続ける諏訪の政策に対して、これまで公に批判するものはいなかったが、藩内では諏訪の腐敗を大腫れ物と揶揄し不正を糺す声も大きかった。
 そんな中で、弥一郎は我が身を省みることなく、農民を虐げた財で私服を肥やす諏訪に刃を振るったのだった。

 弥一郎を侮蔑し嘲弄する夫に逆上した野江は、思わず手にした夫の羽織を打ち捨てたことで、姑からこの家に貴女の場所はないと離縁を言い渡される。


 弥一郎には、即刻切腹を言い渡されるかと思ったが、擁護する声も大きく藩主が帰国するまで裁断を待つこととなった。 野江は獄中の弥一郎の身を案じお百度参りを重ねる。そして意を決して、再び春になると野江は山桜の枝を持って手塚の家を訪れる。家で一人、息子の身を安んじて待ち続ける弥一郎の母・志津(富司純子)に迎えられ。
 ――いつかあなたが、こうしてこの家を訪ねてみえられるのではないかと、心待ちにしておりました。さあ、どうぞお上がりください。
 野江は、志津に予想もしなかった言葉をかけられ、手塚の母・志津とともに弥一郎の帰りを待ち続けるのであった。


――それは、幸せへのまわり道。


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キャスト
磯村野江 - 田中麗奈
手塚弥一郎 - 東山紀之
浦井七左衛門 - 篠田三郎
浦井瑞江 - 檀ふみ
手塚志津 - 富司純子
浦井新之助 - 北条隆博
浦井勢津 - 南沢奈央
磯村左次衛門 - 高橋長英
磯村富代 - 永島暎子
磯村庄左衛門 - 千葉哲也
諏訪平右衛門 - 村井国夫
保科忠右衛門 - 並樹史朗
堀井甚兵衛 - 石原和海
治 平 - 松澤仁晶
さ よ - 村尾青空
源 吉 - 樋浦勉
肴 屋 - 鬼界浩巳
住 職 - 江藤漢斉
た か - 藤沢玲花


スタッフ
監督 篠原哲雄
企画 小滝祥平、梅澤道彦、河野聡、鈴木尚
製作 川城和実、遠谷信幸、遠藤義明、亀山慶二
脚本 飯田健三郎、長谷川康夫
原作 藤沢周平
撮影 喜久村徳章
美術 金田克美
照明 長田達也
音楽 四家卯大
主題曲/主題歌 一青窈
録音 武進
編集 奥原好幸
助監督 山田敏久
SFX/VFXプロデューサー 松本肇
その他 大坂和美



 武家という仕来りの中で暮らすがゆえに、良くも悪くもその枠の中で皆が、もがき苦しみ一つの光明を糧として生きている人々。
 磯村の家がもぐりで金貸し業を営むのも、そうした下士のなかでのヒエラルキーが下で、それでも必死になって何かを探そうとしてもがいているようで、たまたまお金に目が眩んでいるだけのようにも見えます。
 対照的に描かれる。野江の実家の浦江や手塚の家では、つつましい中でも立派に暮らして行こうとしています。

 どちらが、どう良いか悪いかではなく、仕来りを重んじる。いわば重箱の中に詰め込まれたような社会で暮らしていく、手を伸ばせば誰かの箸に当たり重箱からはみ出すことも許されない。そういった人たちの本当の性が出ているように思えます。 

 確かに、野江は磯村の家で苦労を重ねましたが、裁縫や畑を覚えられたことなどもありますし。塞翁が馬の例えどおり悪いことばかりではないのでしょう。




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  • 2011.08/26 21:27分 
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