あかでやみぬる月の光を

本との出会いを徒然なるままに綴る。

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蝉しぐれ

蝉しぐれ


 原作:藤沢周平。「蝉しぐれ」長編時代小説をもとにした2005年10月1日公開の日本映画。


蝉しぐれ001


 江戸時代。東北の小藩・海坂藩(作者創造による架空の藩。庄内藩がモデルとされる)普請組の下級藩士・牧助左衛門(緒形拳)の15歳になる息子・牧文四郎(子役:石田卓也)は、ある夏の日の朝、家の裏の小川で洗濯をしていて指先を蛇に咬まれた隣家のふく(子役:佐津川愛美)の指先を吸ってやった。
 この時の出来事は文四郎とふくにとって忘れられない思い出となる出来事だった。

蝉しぐれ002



 文四郎の日課は、ひとつ年上の小和田逸平(子役:久野雅弘)や同い年の島崎与之助(子役:岩渕幸弘)の親友といつも一緒に剣術と学問を習っていた。後に学に秀でた与之助は江戸に上って学問を修めるが三人の友情は終生変ることはなかった。
 そんな中で、文四郎とふくが互いに意識するようになったのは頼まれて夜祭に連れて行ったころだったろうか……。
 文四郎は、平凡な日常がおだやかに過ぎてゆくなかで少しずつ大人になっていった。

蝉しぐれ015





 しかし、不幸は突然のように文四郎の一家を襲った。夏の暑い盛り、藩主のお世継ぎを巡る政争が表面化し助座衛門は拘束された。抗争に加わった藩士は反逆者として死罪と決まった。
 文四郎は一度、処刑前の父に対面することが出来た。

 助左衛門は家族を心配する言葉に続けて
「わしは恥ずべき事をしたわけではない……。私の欲ではなく、義のためにやったことだ……。文四郎は父を恥じてはならん。そのことは胸にしまっておけ。」

 父の遺骸を荷車を曳いて文四郎は引き取りに行った。重い荷車を曳きながらの山道は文四郎一人の力ではきつかった。
 坂道を一人荷車を持て余し、どうすることも出来ずにあえいでいるところを、坂の上から一人の少女が駆け寄ってきた隣家のふくだった。ふくは遺骸に手を合わせると溢れ出す涙をこらえ荷車を押しはじめた。
蝉しぐれ004
蝉しぐれ005

 山間に日が落ちかかり、蝉しぐれが……。 荒れ狂う夏を鎮めるかのように鳴いていた。

 それから文四郎の境遇は一変し、罪人の子として古びた長屋に母・登世(原田美枝子)とひっそりと暮らすようになっていた。
 心配した逸平が古屋を探して文四郎を訪ねてきた。逸平によると父・助座衛門は藩内の抗争に破れた派閥に属しており連座させられたというのだった。逸平は切腹を決定したのは主席家老・里村左内とされているが仇を討つなど考えるなと釘を刺す。
 父の戒めを守り剣術の稽古に励む文四郎。そんな折、今度はふくが江戸屋敷の奥に勤めることになった。出立の前日息せき切って文四郎に別れを告げに家を訪ねてくるが文四郎はあいにくの留守だった。稽古から帰った文四郎は急いで後を追いかけるが、途中で邪魔が入り二人はとうとう会うことが叶わなかった。







 それから数年、立派な青年へと成長した文四郎(市川染五郎)は、試合で犬飼兵馬(緒形幹太)に惜しくも負けてしまう。試合後に剣の師である石栗弥左衛門(利重剛)は文四郎に秘剣を披瀝し、狂気に惑わされず心眼で相手を看るように諭す。

蝉しぐれ007


 剣術に打ち込む文四郎のもとに、父の仇であるはずの里村左内(加藤武)に呼び出され、旧録に戻し郡奉行支配をに命じられた。

 出仕し、郷村を周りながら田畑の管理の仕事をする文四郎のもとに与之助(今田耕司)が訪ねて来ていた。それだけではない、江戸での修行を終えて藩校の教授として帰ってきた親友・与野助(ふかわりょう)も一緒だった。
 久しぶりに旧交を温めあう三人は、城下の繁華街で酒を酌み交わす。その中で与野助は藩主の側室となった”ふく”お福様(木村佳乃)が子を身篭ったものの、愛妾おふねの差し金で世継ぎ問題に巻き込まれて流産し、今また再び藩主の子を懐妊し、今度は密かに国許に帰り別邸の欅御殿に匿われているらしいことを話した。


 再び里村から呼び出された文四郎は、あろう事か里村から直々にお福の子を攫って来いとの命令を受ける。明らかな罠に逸平、与之助とともに前後策を講じて、お福の子を受け取ったら横山家老屋敷に駆け込み洗いざらい事情を話すことに決める。

 文四郎は逸平や与之助の助成を借り欅御殿に向かうと、お福に事情を説明しつかの間の昔話をする。しかし、感傷に浸っている暇もなく欅御殿に里村の手の者たちが押し入ってきた。文四郎は、お福・親子を金井村の藤次郎屋敷に避難させるように指示すると、文四郎と与野助は襲い来る刺客たちを相手に二人で奮戦しかろうじて撃退する。
 しかし、最後に残った刺客・犬飼兵馬が文四郎の前に現れ立会いを所望する。文四郎は満身創痍の体を立ち上がらせると秘剣村雨を使い一刀のもとに兵馬を斃すのだった。

蝉しぐれ008




 刺客を撃退した文四郎は藤次郎屋敷でお福と合流するが、横山家老の屋敷まで城下に通じる道は里村の手のもので固められていた。
 藤次郎(田村亮)の提案で川を下る船で城下に入ることになった文四郎とお福・親子は、与野助の機転により無事に警戒をすり抜け陸に上がると屋敷までの通りを急ぎ歩く。
 ふと、お福は文四郎の着物を掴むと昔の思いを打ち明けるように抱き合おうとするが、突然のお子の泣き声にもう互いの間には超え難い物があることを感じるのだった。
蝉しぐれ009

 二人は無事に横山家老の屋敷に辿り付き助けを求めた。お福が横山家老の元で無事に保護されるのを見届けると文四郎は自宅に戻ろうとするが帰り間際、家老・横山又助(中村又蔵)にくれぐれも軽挙を戒められるのだった。

 しかし、内心の憤りを隠せない文四郎はその足で里村の屋敷を訪れると、里村の前に進み無益な争いで多くのものが死んだことを嘆いた。藩のためだと嘯く里村に、死んでいった者たちの気持ちを代弁するように里村の文机を真っ二つに斬りつけて一矢報いるのであった。



蝉しぐれ010
 それから数十年の月日が流れ。前藩主の一周忌を前にお福は出家を決意した。二人は今生の未練として一度だけの再会を果たした。文四郎とふくは昔に戻ったように埋められない時を埋めるように語り合う。


蝉しぐれ013
蝉しぐれ011


「文四郎さんのお子が私の子で、私の子供が文四郎さんのお子であるように、道はなかったのでしょうか……。」

 そこで初めて自らの気持ちを伝え合うも、もはや結ばれる筈もなく再び別れ行くのだった。


蝉しぐれ014


 その日も、蝉しぐれだけが……。








キャスト
牧文四郎 : 市川染五郎(七代目)
ふく : 木村佳乃
牧助左衛門 : 緒形拳
牧登世 : 原田美枝子
島崎与之助 : 今田耕司
小和田逸平 : ふかわりょう
小柳甚兵衛 : 小倉久寛
小柳ます : 根本りつ子
矢田作之丞 : 山下徹大
石栗弥左衛門 : 利重剛
相羽惣六 : 矢島健一
おとら : 渡辺えり子
矢田淑江 : 原沙知絵
尾形久万喜 : 麿赤兒
藤次郎 : 田村亮
権六 : 三谷昇
坂本:深水三章 
関口晋助 : 大滝秀治
青木孫蔵 : 大地康雄
犬飼兵馬 : 緒形幹太
里村左内 : 加藤武
太吉 : 宇賀那健一
平太 : 岡野幸裕
文四郎・子役 : 石田卓也
小柳ふく・子役 : 佐津川愛美
逸平・子役 : 久野雅弘
与之助・子役 : 岩渕幸弘
磯谷主計 : 柄本明
相羽惣六:矢島健一
村上:山田明郷
佐竹:佐藤二朗
伊予:藤貴子
小助:蛭子能収
横山又助:中村又蔵
坂本:深水三章
北村:田中要次
木戸:不破万作
おきみ:中村優子
上杉:西凛太朗
竹井:矢吹蓮
真下:高杉勇次
井関:小林太樹
三矢:夏坂祐輝
中江:田中輝彦
田門:谷口公一
桜井:竹嶋康成
江森:山地健仁
おみち:森脇英理子
おたま:福澄美緒
お澄:岡本結花
お松:もたい陽子
いせ:山本英子
おはん:森田友美恵
くに:坂本麻紀子
山根:高橋研
平太:岡野幸裕
多吉:宇賀那健一
弥助:三木秀甫
次助:新谷祐二
小田島隆
岡山和之
松原誠
大島光幸
山本哲也
佐々みな美
紺谷みえこ
芦名星
小林伊織




スタッフ
原作:藤沢周平(文藝春秋刊)
監督・脚本: 黒土三男
製作:俣木盾夫
製作統括:森隆一 島谷能成 早河 洋
エグゼクティブプロデューサー:遠谷信幸
プロデューサー:中沢敏明 宇生雅明
共同プロデューサー:柴田一成 田中渉
協力プロデューサー:青木真樹 瀬田一彦
ラインプロデューサー:吉田浩二
音楽:岩代太郎
美術監督:櫻木晶
撮影:釘宮慎治
照明:吉角荘介
録音:橋本泰夫
編集:奥田浩史
助監督:森宏治
製作委員会:電通、セディックインターナショナル、ケイセブン、ジェネオンエンタテインメント、東宝、テレビ朝日、朝日放送、名古屋テレビ放送、朝日新聞、東京都ASA連合会
イメージソング:一青窈 「かざぐるま」(コロムビアミュージックエンタテインメント)




 映画に先立ち『NHK金曜時代劇』として放映されたTV版に遅れること2年。構想から15年かけて完成された映画『蝉しぐれ』は、黒土三男監督の思いがすべて詰め篭められた作品です。

 原作者:藤沢周平氏の許可を得るのに3年を費やし、山形県庄内地方のほかにも、京都、姫路、近江八幡、長野、新潟、千葉の各ロケ地を巡って撮影された風景の数々は、山形県羽黒町に組まれた1万坪のオープンセットと相まって、映像の中にはリアルに作り出した海坂藩がそこに確かにあります。



 夏祭りで、ふくがそっと文四郎の袂を摑む。そんな何気ないところが後から活きて来る演出の一つで、このときはただ寄り添おうとするかのようで微笑ましもあり。

 登場する時間は短いですが、亡き名優・緒方拳の「父を恥じてはならん」と言う父と子の結びつきを伝えるに十分なシーンにも名優の圧倒的な存在感をして、最後まで文四郎の歩む道に重きを加えます。


 そして、最後に撮影されたとされる。少年の文四郎(石田卓也)が父・助左衛門の遺体を載せた荷車を牽くシーンは大人でも重くチョットやソットでは動き出す代物ではないそうです。その重い荷車を文四郎役の石田卓也さんと、ふく役の佐津川愛美さんが、文字通り二人で心を合せて矢場の坂を引揚げる渾身のシーンには演技でも演出でもない、映画の神様が居るならば2人の心が自然と紡ぎだした屈指の名シーンです。




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