あかでやみぬる月の光を

本との出会いを徒然なるままに綴る。

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花 の あ と

花 の あ と


 原作:藤沢周平。「花のあと ―以登女お物語― 」の短編時代小説をもとにした2010年公開の日本映画

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 江戸時代。東北の小藩・海坂藩。春の桜の季節。家中の女子どもはお城内に入るのを許され。花の盛りには家中の子女がうちつれて、木の下で持参の重箱を開きにぎやかに物語などをしておおらかに過ごしていた。

 寺井以登(北川恵子)が満開の桜を惜しむように眺めているところに声をかけられたのは、羽賀道場の筆頭の剣士・江口孫四郎(宮尾俊太郎)であった。
 父・寺井甚左衛門(國村隼)に五歳の頃より剣の手ほどきを受けた以登は、羽賀道場の高弟の二人を破るほどの腕前だったが、ちょうど所用で席を外していた孫四郎とは未だ剣を交えたことはなかった。
 わずかに会話を交わしただけの二人であったが、それから孫四郎の誠実な人となりに触れた以登は思いを募らせ、父に孫四郎との手合わせを懇願する。

 そして、孫四郎との試合当日。寺井家の裏庭の稽古場にて以登は孫四郎に竹刀を打ち込むうちに、一人の人間として真剣に試合の相手をする孫四郎にまぎれも無く胸を焦がしている自分がいることに気がつく。その一度の手合わせで以登が感じたものは初めての恋心であったが、家が定めた許婚・片桐才助(甲本雅裕)がいる以登は孫四郎への想いを胸の奥深くに終い込み、江戸に留学している才助の帰りを待ち続けるのであった。

 それから数ヵ月後、江口家(勘定方)の三男・孫四郎は内藤家(奏者番・三百石)の娘・加代(伊藤歩)との婚儀が整い、奏者番見習いとして出仕し懸命に役目を果たしていた。しかし、加代には十七歳年長の御用人・藤井勘解由(市川亀治郎)との密会の噂が耐えなかった。


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 そんなある日、白い雪が降り始めた頃。以登の元に孫四郎が自ら命を絶ったとの報が舞い込んでくる。海坂藩に幕府より普請工事が申し付けられ、江戸への使いの役目に孫四郎が仰せ付かり、それを利用して役目をしくじるように藩の重臣・藤井勘解由により陥れられたのだった。
 以登は孫四郎のあまりにも突然の訃報に不審を抱き、許婚の才助に事の真相を探るように依頼する。勘解由と加代の密通に気付いた孫四郎が手をこまねいている間に先に仕掛けたのだった。
 その卑劣な行為に以登は剣を手に取る。立ち会おうかという才助の申し出を断り、初めて一人の人として真剣に立ち会ってくれた孫四郎との思い出、そして人として義を守り抜くために以登は一人で勘解由と立ち会い、勘解由と助太刀の三人との激闘の末に以登はその想いを果たし終える。

 右腕に傷を負い膝を付いた以登にそっと手を差し伸べたのは才助だった。才助は後の始末を任せるように以登を逃す。勘解由の死と同時に今までの悪行が露見し藤井家は取り潰しになった。

 孫四郎と出逢ってからちょうど一年後。海坂藩に春が訪れ、以登は再び城内の満開の桜の下を歩いていた。風に散る花びらとともに巡り来た春をいつくしむ様に桜を眺める。
 しかし、もう以登にとっての桜の季節は過ぎ去ろうとしていた。これまでにない穏やかな微笑みを浮かべながら、桜の道を行く以登の目には新たな人生が既に映っている。

 以登の直ぐ先にはのんびりと歩く才助の姿が、それに合わせて後ろを歩く以登は紛れもない一つ大人びた「花のあと」であった……。



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キャスト
寺井以登 : 北川景子
片桐才助 : 甲本雅裕
江口孫四郎 : 宮尾俊太郎
郁 : 相築あきこ
武岡津勢 : 佐藤めぐみ
藤井勘解由 : 市川亀治郎
内藤加世 : 伊藤歩
永井宗庵 : 柄本明
寺井甚左衛門 : 國村隼
語り : 藤村志保


スタッフ
監督 中西健二
エグゼクティブプロデューサー 河野聡、上田めぐみ、大芝賢二、町田智子
企画 小滝祥平、梅澤道彦
製作 川城和実、尾越浩文、亀山慶二、遠藤義明
プロデューサー 森谷晁育、芳川透、松井俊之、小久保聡
脚本 長谷川康夫、飯田健三郎
原作 藤沢周平
撮影 喜久村徳章
美術 金田克美
装飾 中山まこと
照明 長田達也
音楽 武部聡志
主題曲/主題歌 一青窈
録音 武進
編集 奥原好幸


映画公式HP: http://hananoato.com/





 映画ならではの様式美がすみずみにまで行き届いており。この作品をきりりと引き締める深い味わいをかもし出しています。
 以登と孫四郎の袋竹刀を使っての試合において、原作では二人とも跣(はだし)となっていますが、ひときわ目立つ足袋の色(以登は白足袋。孫四郎は黒足袋。)により男女の違いを際立たせ。
 茶道の表千家の作法から日常の所作、季節による花入れの椿にいたる。四季折々のすみずみに気配りの行き届いた考証と演出の冴えは映画ならではです。

 主演の北川景子さんは、今回演じるにあたって相当な殺陣の練習をしたとのことですが、その北川景子(以登)と試合する宮尾俊太郎氏が演じる江口孫四郎の殺陣も初めてとは思えない体捌きのキレのよさは見事です。
 また、北川景子演じる孫四郎との試合でみせる形と、勘解由との試合の形を同じにしている辺りも劇中に言うところの剣術・夕雲(せきうん)流なのかなと見ていて大変興味深いです。


 しかし、以登と才助。なにかと二人の間には、家の仕来りや格式の違いなどのそれなりの距離感が感じられます。最初は以登が、才助の無遠慮でがさつな振る舞いを少々嫌っているよう見えます。
 でも、意に染まぬとなれば剣を取ってしまう以登も、居住まいは美しくても行動に粗にして野なところを秘めている。違いは有れども同じようなと言えば同じようなものなのかもしれません。
 存外、大喰らいで少々好色なところの才助の方が、郡代の部屋住みの次男坊という理不尽な辛酸を舐めているだけあって、懐の深さと心根の優しさは人一倍であってお似合いの二人なのかもしれないですね。



 孫四郎に対する、初恋のような淡い静かな思い。微熱にも似たその思いは事件をきっかけに炎となって燃え相手を討ち果たすことになりますが、そうした一つを経ることによって才助のやさしさなどに触れた以登には、もう満開の桜を見ても一年前とは違い宴のあとのように色あせて見えたような感慨だったのでしょうか。
 今が盛りと咲き誇る桜の花道を連れ立って、才助と歩く以登はその後花見をすることもなく。

 それは、まさしく「花のあと」であるかのように……。




公式:映画『花のあと』予告編(ponycanyonチャンネルより。)







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北川景子、甲本雅裕 他

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