あかでやみぬる月の光を

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太公望 〈上〉

太公望 〈上〉
著者:宮城谷昌光


 紀元前1100年ごろ、広大な草原を羊を飼いながら遊牧をして暮らす”羌族”は、先代の王を弔う儀式の生贄(人)を狩り求める商の帝辛(紂王)が率いる王軍に包囲された。商軍は草原に火を放ち炎に包まれた羌族の人たちは逃げ場を失って追い詰められていく。

 その中で”望”と呼ばれる羌族の少年は炎を避けながら逃げる”羊”に導かれるように年下の少年少女たち”彪・班・呉・詠・継”の五人を引き連れて煙の中を走り、草むらを越えて商軍の包囲から逃げることに成功する。
 六人の中で最年長であった望は皆を先導し引き連れ、族人を逃がすために商軍と闘った父の残した最後の言葉、「北に行き”孤竹の邑”を目指せ」にしたがって北に向かう。しかし、すぐに食料と水の不足に悩まされ皆が歩き疲れる。望は一人で水と食料を捜しに鬱蒼と茂る草むらを歩き続けるが、太陽が沈むのと同時に気力も尽きて喬木のふもとで力尽きて倒れてしまう。

 明るさと口に含まされた香水のようなものの刺激に、望が眼を覚ますと鳥の羽を飾った裸の女たちが神に捧げる舞と月の光により喬木は”黄金の喬木”となっていた。思わず望は死後の世界かと考えをめぐらすが、鳥の羽をつけた神に身を捧げた巫女たちに助けられたことを覚る。望は巫女の体を捧げる厚意を断り、供物の好意のみを受け取り包みを抱えて五人の待つところに戻る。
 五人は残った供物を探しに喬木のところに揃っていくが、すでに供物は何者かが持ち去った後だった。そのとき草の中から人影が湧き子供たちはたちまちの内に囲まれる。

 男たちのなかの長である”肝”は望の素性を問いただすと、自分たちも”羌族”で馬を放牧しながら暮らす”馬羌”だと答える。
 肝は望たちを有無をいわせぬ風情をたたえて望たちを自分たちの邑に案内する。食の心配がなくなったことに安堵する望たち一同だったが、しばらくするうちに望たちに向けられる冷たい視線と待遇に気味の悪いものを感じ始める。偶然にも”馬羌”は商と好誼があり、望たち子供六人は商の奴隷として交換されることが決定していることを知る。
 望たちは頃合を見計らい揃って逃げ出すが、馬羌の追っ手に捕まり散々にムチを打たれたのち木につるされる。
―夜が明ければ、死ぬ。
と全身で感じた望だったが、夜明け前にあたりの空気が変り”馬羌”の族が騒がしくなると隊伍を整えて西に進軍し始める。 

 程なく馬上に緋の鎧を纏った一団が望たちが吊るされている木の下に現れる。助けを求める望の勘気のよさに惹かれた緋の鎧の男。鬼方の主”鬼公”に見込まれて望たち六人は九死に一生を得ることになる。鬼方の集団は抵抗する姿勢を示す馬羌族を鎧袖一触で壊走させると、更に一団を南下させる。
 しかし、そこには当代随一の英邁を誇るであろう商の先代の帝乙の弟。帝辛(紂王)の叔父”箕子”が描いた壮大な”土方”と連携した包囲網が敷かれていた。

 鬼公は急使により”土方”軍の南下と”箕邑”の様子の異変が告げられると包囲網を破るべく太行山脈から一団を引き上げるべく急進するが、前方にはすでに箕子の一軍が待ち構えていた。しかし、箕子が率いる商軍から訪れた”箕子の使者”と名乗った男は”土公”との三者会談を持ちかける。
箕子の使者と名乗った男の風采や才覚・度量に感服した鬼公は、この男こそまごうことかたなき”箕子”本人であることを見抜く。
箕子、鬼公、土公の三人は感歎会い照らしあい平和裏に宴が模様される。そして望たち六人の子供たちは鬼公の配慮と土公の厚意により、いよいよ”孤竹の邑”に向かう。



 さあ、みなさま。 商(殷)と周の勢力争いの間で「太公望・呂尚」が縦横に活躍する。壮大な歴史ロマンを秘めた”宮城谷昌光”先生の世界を存分に楽しんでください。

太公望・呂尚が活躍した頃の勢力図
「太公望」の巻頭の地図と作中の描写をもとに、当時の勢力図を合わせたものです。
太公望(中国勢力分布)03

 歴史的な背景を十二分に斟酌して取り入れてありますが、残念ながら「太公望・呂尚」の実像はハッキリとは掴めないのが偽らざるところでしょう。ですから、宮城谷昌光氏が紡ぎ出したこの作品が全て真実でもないですし全て嘘でもありません。
 本当のところ太公望が”羌族”であるかどうかもハッキリとはしません。活躍した年代などから老人とも思われませんが、「三国志」が「三国志演義」により虚実判らない人がたくさんいるのと同じように「太公望」は「封神演義」によって虚実判らなくなってしまったともいえるでしょう。
また、周公旦や召公奭を主題で描くことになれば、マッタク違う人物像になるかも知れません。それもまた一読者としては喜ばしいことなのですが複雑ですね。

 小説を読んでいるだけでは漠然と北に向かったことは分かりますが、巻頭の地図もついてはいますが当時の状況などの実態が分かりにくいと思います。
私も小説を読んだだけではマッタク分かりませんでした。今回のレビューでは宮城谷昌光氏の「太公望」の作品をなぞりながら地図からみた”望”の旅程と当時の状況などを簡単にひも解きつつ暫しのお付き合い願いたいと思います。

a)最初に”望”たちがどこで商の帝辛(紂王)軍に囲まれて物語が始まったのかです。
 宮城谷氏の”望”の出身した土地の名前は”呂”というところとからという解説があります。それに従うなら洛陽(東周の洛邑。後漢・曹魏・西晋・北魏・隋・後唐などの首都がおかれた。)から南東に200キロ離れた”呂”という邑。
ちょうど商の勢力の範囲に入る。と境を接する付近になります。
 このあたりの山のふもとの平原などでしたら、の首都からも平原が続くのでそれほど日にちをかけずに、軍を動かせることが分かります。
帝辛(紂王)と箕子が冒頭の会話で、先代の王を弔う祭りがあるので早い帰還を願っていますが、そのあたりなら平原が続き、黄河を渡河すればいいのですから描写と機を一にすることは言を待たないことです。
 もともと”族”は東のほうに部族がたくさんいたと書物にはありますので。次第に商の勢力に追われる形で山脈を越えて北西のほうに移住していったようですが、このあたりに”族”が残っていたとしても全く不思議ではありません。

b)そこから、の威力範囲の境目をさまよいながら、太行山脈沿いに進みつづけの勢力範囲の北側の”族”が多くいた辺りで”馬羌”の族と出会うことになります。
そして少し北側の”鬼方”が狩りで南下していたところを”望”と思わぬめぐり合わせになり、もう少し南下した”太行山脈の麓”に近い”鬼方土方箕子”の勢力範囲が入り混じったあたりで会合が開かれたのでしょう。
(このあたりの行動範囲は大雑把でスミマセン。”鬼方””土方”の勢力範囲ももっと北のほうに向かって大勢力を築いていたと思われますが明確には分かりませんでした。”箕子”の邑についても、もう少し南か北か正確にはつかめませんでした。)

c)そして、そこから600キロ以上東の”孤竹の邑”を目指して旅します。土公の配下”斿”が同行しますので旅を妨げる盗賊などはいませんが、”箕子”を慕う族が多いことを目の当たりにし改めて”望”が思い描くに一矢報いることの困難を想起させます。
よく考えれば、土方の”箕子”の勢力範囲を歩いているので、そういうことに遭遇するのは当たり前なのですが、の勢力範囲は少しズレもありますが春秋・戦国時代で言えば”斎”の勢力圏に相当しますね。

d)修行を終えて”孤竹の邑”を出発して商の首都を目指す道すがら、鄭凡とともに大邑商から、後の商と周の決戦場となる大邑商朝歌の南”牧野”をへて、黄河沿いに進み渤海からほど近くに栄える””に着きます。そして運命の出会いの”逢青”とであい”逢の邑”でひと時を過ごします。


 こうやって、地図に起こしてみると。当時の勢力範囲が重なりあっているので、”商”と”周”がいずれの時代にかは激突することは避けられなかったように思えます。
 商は北方と北西の勢力を見方に付けたかったように思いますが、”周”がどちらの勢力にも境を接する”召”を見方につけるのは、自然な流れだったのかもしれません。
二巻以降は、望は八面六臂の活躍で大邑商を拠点に、東は周、西は渤海の海産物や逢邑などを行き来しますので、とても旅程を図にするのは難しいです。
ヴェジェ曲線に苦しみながら、こんな地図を作っているから更新が滞るとも思われますが、末永く温かい目で見守ってください。

小説・歴史・中国・ドラマ
太公望〈上〉 (文春文庫)太公望〈上〉 (文春文庫)
(2001/04)
宮城谷 昌光

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