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本との出会いを徒然なるままに綴る。

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孟嘗君 (五)

孟嘗君 (五)
著者:宮城谷昌光

 楚の大軍を迎え撃った徐州の戦いにおいて、一敗地にまみれて後退する斎軍の殿を勤め兵を損なうことなく見事な撤退戦を行い、追撃する楚軍に痛撃を与えた田文の見事な指揮ぶりに斎の宮廷内でも田嬰の嗣子として田文の名前が受け入れられつつあった。

 しかし、田文は気に留める様子もなく戦陣の埃を掃う暇を惜しむように、素早く斎を出立し周に向かった。白圭が完成させた河水の堤の完成を祝うためと、先の徐州の戦の最中でも消息がつかめない洛芭の安否が気がかりだったためである。
田文は白圭に堤の完成の祝いを告げるが、洛芭の消息はつかめぬまま失意の内に周を去っていった。しかし、白圭の邸内には旅で疲れた体を休める洛芭の姿があった。
 田文と洛芭……。互いに相容れない二人の運命を手繰るかのように白圭が洛芭にささやく。
「お会いになってはなりません。いまお会いになれば、鵬は幻となり、消えうせましょう」
そういうと周の学者を邸内に呼びよせ洛芭に学問を授け始める。


 臨淄にもどり無聊をかこっていた田文の元に、田嬰が周王からの見合い話を薦めに来る。
父の強い命令により四代前の周王室から別れ西周家からの娘を娶った田文は婚儀の席で思いがけない再開を果たすことになる。西周姫のうつむいた顔が上がるとそこにはまぎれもない洛芭の顔があったからである。
雷に打たれたような感動に打ち震えながら田文は周の父上と慕う白圭の深い心に感謝するのであった。


 反対に杞憂の色を深めたのは田嬰である。田文を王の御前に新婦とともに兆件させて嗣子となることを内外に伝える腹積もりが、威王の寵愛をへて姜氏の流れを汲む洛芭をぬけぬけと御前に見えることは出来ないからで、そのかわりに田文を分封させ後の封地の名である嘗から孟嘗君となることがこのとき決まったのであった。

 田文は身近な友と食客を引きつれて諸国を巡る外遊に出かける。まずは楚に入り楚の大臣の屈原と感嘆合い照らしあった。次に魏に赴き魏で逗留を続けるうちに魏の宰相である犀首から宰相の位を薦められる。魏の襄王からも全幅の信頼をおかれた田文は五年間だけ引き受けるという約束で魏の宰相の位を受けて国力の回復に努めるべく政を進める。
 そして斎では田嬰の封地が宋によって包囲されていたところを田文の機知で危うく鎬きり、病をへて床に就く父の田嬰を看取ったのち斎の宣王から宰相として迎えられる。

 そして、田文の高名を聞きつけた秦の昭襄王も田文を宰相にと招聘する。しかし秦の宮廷に入った田文は魏冄ら昭襄王の側近らの思惑により讒言によって逆に命を狙われる窮地に陥ってしまう。
昭襄王の寵姫に狐白裘を贈るなどの公作により宮廷を抜けて急いで秦の国境を目指す田文たち食客一同。
――鶏鳴狗盗
などの、後の故事に残る。堅く閉じられた国境の函谷関の門を鶏の鳴き声をまねて門を開ける時刻を錯覚させ辛くも秦から脱出した田文は斎に帰り着き斎の宰相に復帰する。


 孟嘗君は斎・魏・韓を主力とする連合軍を指揮し函谷関で布陣する秦軍を巧みにおびき出し撃破する。秦は河東の地を割いて講和し田文は魏・韓の二国に割譲された領土を分けると斎に引き上げた。
――塩氏の戦い

 斎で執務を執り行う田文はある日、剣をたずさえた一人の食客・馮諼をかかえる。そしてこの漢こそが晩年の田文のために斎と魏を往復し田文を支える功臣のひとりであった。



 満を持しての「孟嘗君」の登場です。
 いよいよ、其の偉才が世に出るときがやってきます。「鶏鳴狗盗」「塩氏の戦い」「馮諼」などの今に伝わる故事が存分に輝きを放ちます。
 いままで、ドラムとベースの低弦だけで下のメロディーだけでもすばらしいメロディーラインにいよいよギターの上のメロディーが組み合わさり越妙な演奏といった感じで、 あたかもモーツァルト「オーボエ協奏曲」にてオーボエのカデンツァに魅了されるようです。


 ここでは孫臏の兵法も見事に再現されているのでいまさら言うこともありません。孟嘗君が行ったことは、いままで利害の対立していた各国が孟嘗君を信じたこと以上でも以下でもないということでしょう。

――あなたを信じること。あなたの国の人たちを信じること。そしてあなたの国を信じること。

 人を信じてその人の国を信じる。それ以外に私たち狭くて広い世界に住む人々が安寧に暮らすすべは他にはないでしょう。
 そこには、憲法九条をただ盲信するのではなく。本当にするべきことが見えてくるようです。
もちろん、そこには孟嘗君の卓越した内政・外交の手腕もさることながら、ひとたび事を起こせば類い稀なる”孫臏”直伝の無敵の軍の指導力が背景にあったことは容易に察せられます。
 日本は憲法などの制約から何かあると”話し合うぞ”ということになりますが、アメリカは何かあると”軍が黙っちゃいないぜ”ということになります。どちらがよいのかは個人の心情などもあるでしょうが、すくなくとも孟嘗君は後者の道を選びながら安寧の世の中をたもったことでしょう。

 さまざまな偽装などで隣人や国を疑いましたがグローバル化したこの世界は疑い出したらキリがありません。疑うだけでなく信じる道を探すのも為政者としての真っ当な道であり、私たちの進むべき方向なのかもしれません。

小説・歴史・中国・ドラマ
孟嘗君〈5〉 (講談社文庫)孟嘗君〈5〉 (講談社文庫)
(1998/10)
宮城谷 昌光

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